2008.08.31

愛と赦しのはざまで  シャロン・サラ

  愛と赦しのはざまで  シャロン・サラ  MIRA


シャロン・サラ名義では随分久しぶりの登場のような気がします。ダイナ・マコール名義の作品が続いていたような。二つの名義にどのような違いがあるのかは、はっきりしませんが。


ヒロインはワシントンD・Cの地元テレビ局のリポーター。現在彼女は普段の事件や事故のニュースとは別に臨死体験とその体験者について取材を進めていた。その過程でシナー(罪びと)を名乗る男の情報を得る。その男は臨死体験で天国ではなく地獄を見たという。しかし目撃証言はあっても本人に会うことは出来なかった。同じころD・Cでホームレスの男たちが消えていった。そしてヒロインのもとへシナーと名乗る男から電話が掛かってくるようになる。
殺人課の刑事であるヒーローはとある少女殺人事件でキスを交わしてしまったヒロインとその後事件の現場でたびたび顔を合わせると反発すると同時に惹かれていた。


最近のシャロン・サラの作品はダイナ・マコール名義も含めてちょっとロマンスの本筋から遠ざかっているような気がしますね。ロマンスはおまけのようで、じゃあミステリ部分が本筋なのかというとそうでもなくて、どっちつかずという作品が続いていたような。残念ながらこの作品もロマンス度は低めでしたね。
主人公二人は理不尽な死を迎えた少女を前にして動揺したままキスを交わし、以降お互い気にしながらも職業上の立場などもあってそれ以上進むこともないままやり過ごしてきました。しかし今回の事件を通して一気に結ばれます。普通ロマンス小説の場合、その結ばれる過程がポイントなんだと思いますけど、至極あっさりでしたね。一応警察とマスコミという立場上の問題を抱えているのですが、そこに焦点が当たることはないまま、すんなり愛を確かめ合います。仕事も有能で、至ってまともな大人のカップルなんですけど、ちょーっと物足りないです・・・。
いつもだとヒロイン自身の成長や癒しもポイントになるんですけど、今回はそれもなかったですし。印象に残ったのは朝起き抜けからリブやらカレーやらをがっつくヒーローと、目も明けずにアイスを食べ始めるヒロイン・・・さすがアメリカ人!!と変な感心をしてしまいました。
この作品の肝はやはり主人公というより、犯人と許しということになるのでしょうか。でも結論に納得いったかというと、全然まったく。
そもそもこの犯人はポン引きなどというおよそ職業ともいえない生業について娼婦たちの上前をはねてたような男ですよ。そのほかあれこれとと罪を重ねている様子、病にかかる以前からまっとうとは言い難いでしょう。それまで善男善女として生きてきた人が病気で人格が変わってしまう、という話ならまだ同情の余地もありますが。この男の場合もともとろくでなしだったのが死の恐怖というか地獄に落ちる恐怖を感じてますます自己中が悪化しただけじゃないの??狂信者ってことになってるけど、この犯人がやってるのは人類の魂の救済ではなく、自分の魂を救済するために他人を利用してるだけでしょ。やってることが宗教がかっているからといって信仰とは何のつながりもないわけです。信仰ではなく恐怖こそがこの男の動機といっていいでしょう。
アメリカ人的なキリスト教だとやたら許しを連発しますが、許しが神の御業ならば人間に求めるのは無理じゃないの、などと不敬にも思ってしまいます。ていうか殺されかかって間もないヒロインにそんなの求めてないよ。
それにしてもどうしてヒロインに目をつけたんでしょうかね。自分のことを探っていたからにしても、さしたる力も、伝手も持ち合わせていなさそうな犯人がどうやってヒロインを追い回したり出来たのかなーと。

ヒーローメロメロ度85
2008.04.16

あたたかな雪 ダイナ・マコール

 あたたかな雪 ダイナ・マコール MIRA

このblog最初のころに好きだと書いたわりにそれきりだったダイナ・マコールです。新作が出れば読んでいるんですけどね。

ヒロインは千里眼といわれる超能力を持つ女性。子供のころ父親の死を知らせて以来、その能力を期待されると同時に恐れられ、40歳の現在に至るまで独身のまま山の中で動物たちと暮らしながら、時折視る犯罪や事故の現場を町の保安官に知らせている。あるとき、ヒロインの住む家の近くの雪山の中に飛行機の墜落現場と、生き残った若い女性と男の子の姿を幻視したヒロインはいつものように保安官事務所に連絡する。二人に更なる危機が迫っていることを視たヒロインは自ら現場に赴くことに。
現場には男の子の父親でイラク帰りの傷を負った元軍人と彼の父親たちが駆けつけていた。彼らは始めヒロインの話を疑っていたがほかに手がかりもないため彼女の導きにしたがって捜索に出た。

ええっと、ヒーローは男の子の父親(20代)、ではなくさらにそのまた父親がヒーローになります。OH!おじーちゃんん?!まだ40代です、ヤンジジですね。どうやら早婚の家系らしく、ヒーロー父(60代)、ヒーロー祖父(80代)、都合5世代が登場します。すごいね、同一の時間軸でこれだけ勢揃いした話はなかなかないですね。ま、ロマンス的にはおじーちゃんてどうよ??とも思いますが。
ヒーロー家族はそれぞれ伴侶とは死別したり、病気で施設入りしたため別居したりしています。ヒーローだけが×2。
ヒロインが山の中で孤独に暮らしているって設定が最近邦訳されているシャロン作品には多いですね。まあ、シャロンのヒロインは家族に恵まれず孤独な生活を送っている設定が大半ですけど、その分ヒーローが優しいわけですw
もちろん今回のヒーローもそうです。最初こそヒロインの力を疑ったものの、彼女の真摯な態度に接して早い段階で考えを改めます。ヒロインも孤独な生活を送っているだけに、ヒーローはもちろん一家の強い絆に惹かれて行きます。
内容的にはもし悪役がもっと間抜けでコメディ調だったらそれこそクリスマスシーズン向けのファミリー映画になりそうですね。一族の男5人がそれぞれ活躍し、ヒーローとその息子は愛する女性を得る。そこはシャロンですから家族の愛情や絆、ヒロインの孤独とそこからの脱出、ヒーロー息子の心の傷の癒しなどが盛り込まれています。
重たくなりがちな話ですが、あっさりとテンポ良く書かれているので、読みやすいです。

ヒーローメロメロ度80
2007.08.20

完璧な嘘 ダイナ・マコール

今回もお気に入りの作家の一人、シャロン・サラの別名義ダイナ・マコール「完璧な嘘」です。この別名義の使い分けも理由はわからない。なんか違うのかな??

16年前ヒーローは当時の恋人に自分の子供を中絶したと告げられる、しかし実際それは彼を追い払うための恋人の父親の策略で、赤ん坊は生まれていた。そして現在CIA捜査官となったヒーローは、潜入捜査によって麻薬王を追い詰める。息子を殺され、自身も逮捕された麻薬王はヒーローに復讐するため、ヒーロー本人はその存在を知らない彼の息子エヴァンを誘拐する。
ヒロインはエヴァンの母親の妹で、かつて姉の恋人であったヒーローに憧れていた。麻薬王の復讐により姉が殺され、父親も撃たれ、甥が誘拐されるという状況でようやくヒーローを捜し当て、エヴァンの救出を求める。再会した二人は、緊迫した状況の中、過去の経緯ゆえに戸惑いながらも惹かれあう。

これがほかの作家の作品だったら、ヒーローは責任のないヒロインに八つ当たりしまくりだろーなー。でも、優しいヒーローの代表格シャロン・ヒーローはやっぱり大人なのさ。再会してすぐはもちろん初めて聞く事実に腹を立てたりするけど、なんだかんだとヒロインに優しいんだよねー。正直、最近のシャロン作品はちょっと肩透かしな作品が多かったけれど、今回は最後まで緊迫感アリで、読ませる。ヒーロー息子のエヴァンがとっても健気で芯の強いいい子。最悪な状況でもめげずにいた彼の姿にほろりとさせられる。そして諸悪の根源ヒロイン父と安易や和解をしなかった点もよかった。これは意見の分かれるところだと思うけど、安直な家族幻想はあんまり好きじゃないので。