2008.11.10

令嬢と悩める後見人  エリザベス・ソーントン

  令嬢と悩める後見人  エリザベス・ソーントン  ラズベリーブックス


トラップ・シリーズのソーントンの新シリーズです。シリーズの作品数が多いと順不同で出版されてしまうことがよくありますが、さすがに三部作は順番通りに出してくれますね。そうじゃなかったら話がめちゃめちゃになっちゃいますけど。


ヒロインはフランスでも有数の銀行家の孫娘。ヒロインの祖母がヒロイン母を連れてイギリスへ駆け落ちしたため、イギリスで生まれ育った。両親は既に他界し、伯父夫婦に引き取られたが、意に染まない縁談を押し付けられたため2年前、祖父を頼って単身フランスへやってきたのだった。祖父はヒロインをたいそう可愛がってくれるが、最近祖父が秘書として雇ったアメリカ人はヒロインに対しておよそ使用にらしからぬ横柄な態度接するのだった。自分の死期を悟ったヒロイン祖父は実はイギリスの貴族である秘書・ヒーローに孫娘をイギリスへ行くよう託した。銀行家の息子との結婚を夢見ていたヒロインは当然これに反発するが、ヒーローは有無を言わせぬ態度で強引にヒロインを連れ出した。
ヒーローは妻が殺された事件の鍵を握る人物としてヒロインを探してフランスにまでやってきたのだった。


トラップシリーズはそこそこ面白かったんで、期待してたんですけどねぇ。話は悪くないんでど、ヒーローにすごく腹が立つ。何でこいつはこんなに偉そうなの??
とりあえず突っ込みたいのはヒロイン祖父はいい加減すぎ。たった数ヶ月の付き合い、しかも胡散臭い目的でヒロインを探しに来たヒーローを簡単に信用しすぎ。大金持ちの銀行家なのにもっと信用できる使用人とかいないの??ヒロインがイギリスに帰ったら殺人鬼に狙われるかもしれないのに、何でイギリスに帰す??アメリカあたりでいいじゃないですか。しかもイギリスに帰って社交界へってものすごく囮として使う気満々ですよヒーローは。そんな男に大事な孫を託すかー??この辺の設定の甘さが気になります。
ヒロインは甘やかされたお嬢様ってことになってるけれど、実際にそういう生活してるのはフランスに来てからで、元々そうだったわけじゃないですよね。世間知らずのところはあるし、感情的なところもあるけれどそれほどわがままっという印象はなかったですね。スマートなハンサムに熱を上げるのも、この年頃ならよくあるでしょ。ヒロインが問題を起こすのは、むしろ前段階でヒーローがヒロインの扱いに失敗してるからとしか思えない。ただヒロインがフランスに来るまでの道のりはちょっと無理がないですか??世間知らずのお嬢さんがとても無傷でこられるような道中じゃないでしょ。学校時代の話もたいして書かれていないわりに随分だし・・・。現在のヒロインとあまり結びつかないし、それほど有効なエピソードとは思えないんですけど。
ヒーローは本当に、腹立たしいタイプの男でした。独善的で思い込みが激しく、全然有能そうに見えない・・・。ヒロインのことを甘やかされてたお嬢様だと馬鹿にして、肝心なことをまったく話しません。妻を殺した犯人を捜すためにヒロインを利用してるに、最終的に自分を正当化して、悪いなんて思ってもいないし。ヒロインを対しててその場限りの哀れみをかけたり、可愛がったりするけれど、なんていうか根本的にヒロインを対等の人間として認めてない感じが最後まであっていらいらします。ヒロインの人格に対しても配慮が欠けてるし・・・。ヒロインはこんな男のどこがよかったの・・・??
亡妻を愛していたとかいっても、その後も愛人作ったり、高級娼婦とよろしくやったり、全然同情できません。
いっそ悪役のほうが面白かったですね、最近は悪女も進化系ですよ。主人公たちに斬新な性格を与えると、作品自体もどっかちがう方向に行ってしまいがちですが悪役がステレオから抜け出すと、ちょっとひねりの効いた話になりますね。今回はヒーローの愛人との手の切り方があまりにお粗末なので、むしろヒーローを締めてやってください、と期待してました。
これもシリーズ物なんでしょうか。でもスピンになりそうなカップルは、作中まとまっちゃたみたいだし・・・。放蕩者っぽいヒーロー義弟が最後にヒーローの鼻を明かしたのよかったですね。もっと言ってやってー。残るはデズモンド??

ヒーローメロメロ度60
2008.02.26

恋の罠は夜ににまぎれて エリザベス・ソーントン

トラップシリーズ第3弾、これで完結のようです。前2作とはヒーローが親友同士というつながりです。わりあい面白く読んだような気がするのですが、既に前2作の記憶がおぼろげです・・・。ただ今回のようなパラノーマル要素はなかったですね。

ヒロインはミセス・バリモアというペンネームでゴシック小説を書いて人気を博している。普段は小さな町で叔母と一緒に暮らしているのだが、年に一度編集者が主催する作家仲間や支持者たちとの交流会があり、ロンドンへやってきた。そこで愛読者の孫であるヒーローと出会う。ヒーローは軍隊時代の上官にかつて上官の家で起こった事件と同じ設定の小説が新聞に掲載されているため、その作者アンジェロを調べてほしいと頼まれていたのだ。

ヒロイン母方の血筋は女性が幻視のような特殊能力もっているため、変わり者と思われています。ヒロインも、その母も叔母もそれぞれ能力を持っています。母親はヒロインが子供の頃何者かに殺され、ヒロインはそれをその能力によって見ていますが、実際には犯人がからないままです。ヒロインは自分たちの能力を父親に否定され、また周囲の人から気味悪がられたこともあって現在は使わないようにしていましたが、交流会の際何者かの強烈な悪意が彼女の頭に入り、再び自身の能力問題に直面することに。
ヒーローは障害者だった弟が川で亡くなったことがアンジェロによって殺人だったと小説にされていることを知り、是が非でもアンジェロの正体を追い詰めようとします。
過去と現在の事件が繋がりあって話は進みます。
主人公二人は当初はお約束のように反発しあってます。ヒロインはヒーローを享楽的なプレイボーイと思い、ヒーローはヒロインを世間知らずで気の強い田舎娘と思っています。実際ヒーローは弟の死以来虚無的になり、侯爵家の跡取りでありながら軍人として出征し帰国後は退廃的な生活を送っており、ヒロインは母親の死後、再婚した父とはうまく行かず未婚の叔母とひっそりと暮らしてました。お互いまるでタイプでないと思いながら惹かれあっていきます。
けっこうあっさり関係を持つんですが、もう少し二人がひかれあう過程が描かれていたらなお良かったな。即座にきちんと結婚しようとするヒーローは好感が持てましたが、この時点ではヒロインが断るのも無理はない。ヒロインの能力を信頼するか否かが二人の関係のポイントになります。
とはいえ後半はなんだかんだとラヴラヴでしたね。ヒーロー独身主義はどこへいったのさ??っていうくらいに。
脇役にもカップルが出てくるんですが、いかんせん出番が少なすぎて肩透かし。アマンダとフィリップは何があったのさ。ものすごいもやもやするよ、ちゃんと書いてくれ。サスペンス部分が丁寧に描かれている分、他のところが中途半端でしたね。ネルは結局なんでべドラムに入れられてたのよ。ロバ大好きアンナのその後も気になります。でもこの作品がシリーズ完結編なんですよね・・・残念。

ヒーローメロメロ度 80
2007.11.04

不名誉なキスは恋の罠 エリザベス・ソーントン

「恋の罠に落ちた伯爵」に続くトラップ・シリーズ第2弾です。最近の作品は猫も杓子もシリーズとスピンオフの嵐です。少なくともこのシリーズは順番通りに翻訳されているのでまだましです。権利上の問題などいろいろあるのでしょうが、できれば順番どおりに読みたいと思うのが読者の正直な気持ち。そこのところもう少し頑張ってください<各出版者様

ヒロイン伯爵令嬢だが、三姉妹だったため爵位と館はいとこのものとなっている。先日亡くなった母方の伯母が住んでいた家と多少の遺産を残してくれたため、そこへ引っ越すことに。その前に父方の親戚の家に寄せてもらいロンドンの社交生活を楽しむことに。そこへ亡き伯母の教え子で生前彼女と親しくしていたヒーローが現れて、ヒロインに何くれとなく世話を焼いていた。実はヒーローの下に亡きヒロイン伯母から奇妙な手紙が届いており、その真相を探るため、ヒロインに近づこうとしていたのだった。

最近の作品としては珍しく、出会ったときから寄ると触ると性的欲求が高まってたーいへんというような描写がほとんどない作品でした。前作はどうだったかな。ちょっと思い出せないですが、でももうちょっとその手の描写があったと思います。個人的にはこういうほうが好きです。容姿とセックスアピールばかりに目がいく描写を読んでると、それってロマンスっていうより欲求不満なだけじゃ・・・・・・と突っ込みたくなるので。
ヒーローは公爵の庶子で自力で成功を収め、現在はいくつかの新聞社を経営し、更に政治家とし立候補しようとしているところです。大忙しのはずですが、もちろんヒロインに張り付いてます。だってロマンスのヒーローだからw庶子ということもあってちょっぴりゆがんだ長男気質で、異妹弟に対して責任を持って面倒を見ているんだけど、あまり仲はよろしくない。
一方ヒロインは三姉妹の一番上でバリバリの長女気質、両親が他界していることもあって歳の離れた妹たちの母親代わりです。気が強くて口が達者なヒロインが多い中、このヒロインはヒーローと言い合いになるとうまく切り替えせずに口ごもってしまったり、自分が悪いと思ったらすぐ謝ったりと、いかにも育ちのいいお嬢さんという感じです。でも自分を脅迫する男を殴りつけちゃうようなところもあってそのギャップも素敵です。年齢は最近のヒストリカルの傾向か27歳とけっこういってるけど、理由があるので違和感はありません。
ストーリーは20年前のヒロイン叔母の失踪と、ヒロインが結婚しない理由と二つの謎を追っていきます。怪しい人がたくさんいて、ミステリとしてもけっこう楽しめました。
ロマンスに関しては、ヒーローのちょっと無神経な言動に時々いらいらさせられました。タイトルにあるようにまだ知人の域を出ていないのに公衆の面前でキスをしたり、夜中に女所帯を訪ねてきたり、自分は愛してるといえないくせにヒロインに全面的に受け入れることを求めたり。ヒロインの立場や気持ちへの配慮が欠けるところが少々ありました。全体的には実はけっこう真面目なヒーローと、生真面目なヒロインが行きつ戻りつしながら心を開いていくという感じでよかったです。もうちょっと盛り上げてくれてもよかったんですが。
次回作のヒーローである、ヒーロー友人アッシュは大活躍でした。でもアッシュって書かれると全然違う人が頭の中に浮かぶんだよなー。次回作で終わりなんでしょうか、だとしたら今回のヒーロー異母弟とヒロイン妹のロマンス未満の関係にも言及してほしいですね。

ヒーローメロメロ度80