2008.04.29

暗闇に抱かれて カレン・ローズ

 暗闇に抱かれて カレン・ローズ 早川書房

2日前に途中まで書いたのを消してしまって(またか!!)やる気をなくしていました・・・とほほ。
前作のあとがき通り翻訳されましたね。良かった、良かった、これからも期待してますよ<早川さん
今回の作品は文春文庫から出版されているカレン・ローズの日本デヴュー作「誰かに見られてる」に登場したヒーロー弟が主役となって登板しています。ヒロインのほう初出だと思います。邦訳はまだ3冊ですが、スピンオフというかシリーズものというか関係した作品はまだまだたくさんあるようなので順次出版されることを願っています。出来れば出版された順番どおりに・・・・。

ヒロインは精神科医。主に自殺未遂暦のある患者を扱っているがそれとは別に警察から容疑者の精神鑑定を請け負うこともあった。しかし最近起こったホームレスによる3人の少女と警察官殺害事件において容疑者に責任能力なしという鑑定をしたため、警察から反発を受け契約を打ち切られていた。その事件で殺された少女を発見した刑事であるヒーローもまたヒロインに対して強い怒りをもっていた。
あるときヒロインの患者の女性が自殺した。通報を受け現場で仕事を始めたヒーロー、匿名の電話を受けて駆けつけたヒロインと出会い、反発を隠せない。捜査の結果自殺は単純なものではなく、何者かが彼女を自殺に追い込んだものだと判明する。そして残された証拠は犯人がヒロインであると示していた。警察内部のヒロインへの反感や、残された証拠によりヒロインは重大な容疑をかけられるが、彼女の無実を確信する少数派の意見もあり、事件はさらに詳しく調べられることに。そこへ再び彼女の患者が自殺する事件が起こる。

大変面白くなおかつテンポよく、登場人物も魅力的で好きな作家の一人ですが、今回ちょっと気になることを突っ込ませていただくと、まず人が殺されすぎ。数えていないですが13人以上死んでます。ちなみに犯人が殺した、あるいは殺害に関わったトータル件数はもっと多いでしょう。でもねこんな短期間に13名も殺されるなんて犯罪史上においてもかなり珍しいと思いますよ、銃の乱射などを除けばほとんどないでしょう。主要登場人物に警察関係者が多いのに無能だと思われちゃうよ・・・。しかもそんな大量殺人が彼らの周辺で頻発してるわけです。こんなに殺人事件に遭遇してしまうなんて片平なぎさかコナン君並です。もうちょっとバランスをとってほしいです。
もうひとつはネタばれなので下に書きます。
事件が陰惨な分主人公が誠実で正義感の強いタイプが多いと前回の感想でも書いたような気がしますが、今回もそれは当てはまります。
ヒロインは非常にまじめで仕事熱心、職業倫理は堅固です。作中普通の人間ではとても正気ではいられないような状況に追い込まれますが、そんなときでも理性と気遣いを忘れない人です。ちょっと出来杉君過ぎる気がしますが、そのまじめさが故に人間関係においては融通の利かないこともあるようで、婚約者には浮気されて破局、父親の浮気疑惑で家族と絶縁状態。婚約者の裏切りによって傷つき自信を失っていますが、そこはもちろんヒーローが解決してくれますw家族の問題に関しては発端はさておき、ヒロイン母の行動はどう言い訳しようと自己保身以外の何物でもないでしょ。ヒロインそんな簡単に許せるのー??
このヒロインは本当に精神的に強かったですね。ありがちな口ばっかり強気なヒロインではなく、むしろ一見穏やかなタイプなのでなおさらそう感じます。ホームレスの事件に関してもヒロインもまた犯人を憎んでいるけれど感情に流されず鑑定を行い証言し、その結果を受け入れようとしています。
ヒーローは「誰かに見られてる」のヒーローだった兄よりも幾分直情的だし、思い込みも激しいですね。刑事が予断でいっぱいじゃだめでしょ!!最もヒーローが当初ヒロインに対して偏見や疑惑を抱いているのはカレン・ローズのお約束のようですが。以前付き合っていた女性がお金大好き!!というありがちな女性だったためいかにもハイソで高学歴なヒロインに気後れし、八つ当たりしたりします。でも前の彼女なんてもともとお嬢だったわけでも何でもなく、一度すった甘い汁が忘れられないだけの俗物なのでヒーローがそれほど卑屈に思う理由としては弱い気がします。ちなみにヒロインはとくにお嬢様ではありません、彼女の経歴は捜査上調べているから知ってるはずですけどね。基本的にはメロメロヒーローですけど、ヒロインの置かれている状況が本当にひどいのでもうちょっと包容力があってもよかったかな。
基本的に主人公側の人は善人ぞろいなんですが、脇に出てくる成功することで頭がいっぱいのあまり倫理を捨て大切なことも切ってしまう駆け出しジャーナリストや、厚遇されているのにもっともっと良くされて当然と考えている秘書などなぜか強烈な嫌な役は女性ばかりですね。男は小物ぞろいだ。
結構長い話ですが読み始めると一気に最後まで読みきれる作品でした。あと関係ないですがヒロインには盗撮した映像を掲載した出版社等をきっちり訴えてほしいですね。ヒロインてやられっぱなしが多いですから、たまにはガツン、と。

ヒーローメロメロ度 80

以下更なるネタばれ・・・犯人割れていますので気をつけて続きを読む
2007.10.28

復讐の瞳 カレン・ローズ

文春文庫「誰かに見られてる」で日本デビューしたカレン・ローズの2作目です。スピンオフなのに出版社が変わってハヤカワ文庫です。相変わらずロマンス小説の出版事情は分けわかりません。順番もめちゃくちゃな出し方だし。早川では今後も出版予定らしいので、どうか全部出してください。お願いします。
「誰かに見られてる」も今回の作品もお勧めです。

ヒロインはシカゴでDV被害者のシェルターを運営している。ヒロイン自身も実父、継父、夫によって虐待を受け、継父によって母親を殺されている。母親の死に罪悪感を感じているヒロインは自らの安全を省みずシェルターの運営に全力を尽くしている。あるときそのシェルターに新たに男の子をつれ顔に殴られた跡のある女性がやってきた。ヒロインは彼女の言動に違和感を覚えながらもいつものように面倒を見ていた。
一方ヒーローは任務中の怪我の後遺症で海兵隊を除隊され、その後はかつての海兵隊仲間であり、元刑事で現在は探偵をしている友人と組んで情報セキュリティの仕事している。あるとき幼馴染で、海兵隊の任務中にヒーローをかばって死んだ親友の弟から、誘拐された息子の救助を求められる。犯人から警察に通報したら息子は殺すと脅されているため、内密にやってほしいといわれたヒーローは、親友の死に対する罪悪感から引き受けることに。
犯人の足跡を追ってシカゴにやってきたヒーローは、引ったくりに遭った老女を助けるため怪我をしたヒロインに出会う。

一目あったときから惹かれあう二人ですが、それぞれ辛い過去を抱えて罪悪感に苦しみ、現在も難題に直面しているという状況なので、おいそれと先には進めません。しかし惹かれあう気持ちは否定できず、少しずつ心を通わせていくところが無理なく描かれています。
カレン・ローズの主役のいいところは本当に誠実で、ひどい状況にあっても前を向こうとする姿勢があります。ちょっとできすぎなくらいですが、作中の事件が陰惨なだけに、読者としては安心して主人公に委ねられます。
二人のラヴシーンはHOTというよりも、傷をを負った2匹の獣が互いの傷をなめあって癒しあっているような感じで切ないです。でも決して同病相憐れんでるわけじゃないのです。
そのほかの登場人物も魅力的でおそらくそれぞれ別の作品で主役を張っているのでしょう<早川さん、ホント頼みますよ!!
犯人はかつての被虐待児であり、人格障害者であり良心を持たず、次々と殺人を重ねていきます。でも犯行そのものより、容貌の描写のほうが怖い。限りなく薄いブルーの瞳のため白目に見えたり、二の腕が筋肉モリモリだったり、でも色仕掛けも使うという。なんかすごく怖いものがあります。彼女を狙う男もいるんだけど、思わせぶりに登場したわりにはぱっとしないまま消えちゃったな。
それにしても死人が多く、ロマンティックサスペンスにおける個人の犯行としては過去最高の死亡者数では??

ヒーローメロメロ度90

スピンオフなため「誰かに見られてる」のヒーローが出てくるんですが、以下ネタバレ注意続きを読む