RomanceLiteracy
海外ロマンス小説を中心にしたネタばれを含む読書感想

アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う  ゲイル・キャリガー

  アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う  ゲイル・キャリガー  ハヤカワ文庫


英国パラソル奇譚第3弾の登場。前作『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪なう』では最後で強い引きをかましてくれてました。無事続きが読めてよかったです。


ヒロインは妊娠がわかった瞬間に夫であるヒーローに不貞と決め付けられた上、酷い罵詈雑言を浴びせられた。仕方なく実家に戻ったものの、異母妹がヒロインの妊娠とヒーローの反応をばらし、社交界はヒロインを責め立てた。頼みの綱のアケルダマ卿はヒロインを家に招待してくれたものの、行ってみるとそこはもぬけの殻だった。ヒロインは身の潔白を晴らすべく、自分のような反異界族と異界族の間に妊娠が可能であることを証明する手段を探すため、発明家のマダム・ルフォーと執事のフルーテとともにヨーロッパ大陸に渡った。一方傷心のヒーローは酒を飲んで酔いつぶれていた。ヒロインを信任したヒーローの副官ライオールは人狼団をまとめつつ、ヒーローのフォローをする羽目になった。


予想通りライオールは前作以上に孤軍奮闘しておりましたwせっかくびしっと決めたお洋服も台無しです。大事なコレクションをヒーローに台無しにされるし、その研究もルフォーにバカにされまくりwいや確かに、狼が羊の繁殖を研究してるってそれは何なの?!食糧問題のためなのか、単に知的好奇心ゆえなのか。ヒロインにも同情していたし、人狼としては珍しいくらい共感能力がある人なんでしょうけど、それにしても、やけにビフィに肩入れしてましたねぇ。好みのタイプなのか?ライオールだったら吸血鬼になってもやっていけたと思うし、そうだったらアケルダマ卿ほど派手じゃないしても、洗練されて知的な取り巻きに囲まれて楽しく暮らせたかもw
でも転生する引き換えに多く魂と芸術的才能や知力を失うのだとしたら、ライオールが今も知性と理性溢れているはどうしてなんでしょうね。アケルダマ卿なんかもそうだけど。よっぽどたくさん魂をお持ちだったんでしょうか。意外だったのヒーローね。転生する前はオペラ歌手だったって・・・マジカヨ。転生の際にそうした才能も声も失ったそうですが、あの性格でオペラ歌手?性格も変わっちゃたの?転生の前後でどれくらい変化するのかは謎が多いですね。今回のビフィを見る限り性格にも愛と忠誠にも何の影響もなさそうだったけど。
アケルダマ卿は予想以上に情が深いタイプでしたね。でもどうなの?あのドローンたちはみんな恋人?それともビフィが特別なのか?女王に変わりはいくらでもいるでしょと突っ込まれて、何も言えないとことを見るとみんな恋人wってことでしょうね。
寡黙な執事フルーテが今回は大活躍。もしかして彼自身騎士団のメンバーだったのかとも思ったけど違うかな。まだまだ謎の多い人です。口も堅いですがヒロインを守る決意も固いです。
ルフォーも大活躍でした。彼女もその背景は不明なところは多いですが、ヒロインへの好意も本物です。今後は男以上にヒーローのライヴァルとして活躍してほしいわ。
アイヴィも予想外に頑張ってましたね。上流階級の末席に座ってるより、今の生活のほうが彼女にあってるようです。
ヒロインはけっこうあっさり許しましたね。もっとごねてもいいかと思うけど、ヒーローってなんか愛嬌があって許してしまう気持ちもわかる。ヒロインラヴなのは誰が見ても丸わかりだしさーwwまったく狼も食わない喧嘩に巻き込まれたライオールこそいい面の皮です。君は本当によくがんばった!!
ヒロインを狙う吸血鬼たちですが、やはり異界族は転生で知性を失ったようなのが多いのでしょうか。ヒロインを殺せばウールジー団との全面対決は免れないし、アケルダマ卿だって黙ってないでしょ。ばれれば女王の怒りも買うだろうし。何でもっと平和的な解決方法を探せないかな。アケルダマ卿が言うとおりヒロインは反異界族だからといって異界族を敵視してるわけじゃないんだから。
ラノベっぽい表紙の絵ではスレンダーな美人に描かれているヒロインですが、作中海辺に打ち上げられた海洋哺乳類と書かれていました。「・・・あれから三十年、夜中にふと目を覚ますと隣にトドが寝ていた」って綾小路きみまろの世界じゃないですか。せめてアザラシくらいだと思いたいw
次は再び英国に戻ってお話のようです。ヒーローたちの過去も明かされるとか。すごく続きが気になります。

その心にふれたくて  アナ・キャンベル

  その心にふれたくて  アナ・キャンベル  二見文庫


少々あざとい作風ながら、押さえるべきロマンスのつぼは押さえて人気のアナ・キャンベルの邦訳第三弾。


ヒロイン:カリス・ウェストン 21歳 伯爵令嬢
ヒーロー:ギデオン・トレヴィシック 25歳 ペンリン領主

ヒロインは21歳になれば亡き父の遺産を自分のものとすることが出来る。しかし欲深い継兄二人がヒロインの財産を狙い、彼女を監禁し望まぬ結婚を強要しようとした。相手は兄たち同様放蕩と浪費に耽る男で、ヒロインは命からがら逃げ出した。宿屋の厩に隠れていたヒロインを見つけたのは、領地に戻る途中のヒーローだった。父と兄を亡くしたため、領地を継ぐことになったヒーローは傷つき怯えたヒロインを見て、彼女を助けることを決意した。ヒロインは当初ヒーローを信じきれずに逃げ出すが、窮地を救ってもらい彼の助けを受け入れることに。ヒーローはヒロインを伴って領地へ戻った。

監禁大好きアナちゃんは、やはり主人公たちを監禁していましたwま、今までの作品に比べれば監禁そのものはぬるいかな。全体的には、倒錯的な要素が満載の前二作に比べれば、そうした嗜好は薄いです。窮地に陥ったヒロインをカッコよく助けるヒーロー、しかしそのヒーローもまたつらい過去に傷ついていたがヒロインの愛により救われる、王道ですね。
基本的にこの作者は傷ついた野獣(でも見た目はもちろん美形w)が愛によって目覚めるというタイプの話が好きなようです。ロマンスにはよくある話ですが、味付けが濃い目なのがこの作者の特徴ですね。
ヒロインは精神的にも肉体的にも暴力にさらされ、本当にぎりぎりのところを逃げてきたハズなのに立ち直りが早すぎ・・・。最初の頃こそヒーローを信じきれず逃げ出しますが、そのときですらヒーローのお顔の美しさにポーっとなってましたからね。余裕あるね、君。さっさとヒーローに惚れた宣言をして、その後は押せ押せで怯えるヒーローをゲットって感じです。物語の初めでは薄倖の美女だったはずなんですが、いつのまにか押しかけ女房にすら見えました。途中からは兄たちに追われていることもたいして気にしてなかったしね!良く言えば逞しい女性です。
一方ヒーローはぐずぐず・・・。最初こそヒロインをかっこよく助けて、いかにもヒーロー然としていましたがそれもそこまで。結婚してからは悩めるハムレットのごとき葛藤をみせていました。
ヒーローの設定は例によって突っ込みどころ満載。そもそも若いです、このヒーロー。まだ25歳。大学卒業時に東インド会社にスカウトされてそのままスパイ活動して、途中正体がばれ1年近く監禁拷問生活。半死半生のところを救助され半年ほど治療に専念。イギリスに帰国するとなぜか英雄に祭り上げられていたとのこと。当時の大学がどういう制度だったのかしらないですけど、卒業する時20歳くらいにはなってますよね。いくら外国語に堪能だって、母国語のごとくしゃべるにはきちんとした訓練が必要だし、何より学生がいきなりスパイになれるわけない。それなりの訓練期間があったと思うのです。そうしたことを考えると、ヒーローが実際にスパイとして働いていたのって、せいぜい2年、長くて3年というところじゃないですかね。ヒーローの言い方だと、半生を捧げたごとくですが。監禁拷問によって時間の感覚がずれたというのはあるでしょうが。ただ拷問に関しても、一ヶ月で二人が亡くなるほどの酷い拷問を受けて、ヒーローが傷跡こそ酷くてもほとんど障害も残らずに生還したって、ちょっとうまくいきすぎ。
ていうか、いくらヒーローが地黒だってインド人に見えるわけないだろって誰も突っ込まなかったんですかね。あ、現代イギリス人・ラッセル・ブランド(ケイティ・ペリーの元夫)とか、日焼けすればかなりいけるかも?ただあの顔じゃヒーローにはなれない・・・。インド人にもハンサムはたくさんいそうですが、インド人ぽいイギリス人が美形といえるかどうか、かなり疑問です。
ヒロイン兄たちは無能すぎました。そもそも妹を結婚させちゃったら財産を自由に使うのは無理でしょ。いくら相手の男と結託してたって、同じように欲深な自己中男。結婚したとたん財産を独り占めするのは目に見えています。そんなまどろこっしいことをするくらいなら、自分が金持ちの花嫁を探したほうが確実でしょ。一応侯爵なんだから、その地位で成金令嬢とか釣り上げればいいのに。最初ヒロインが兄たちがいかに恐ろしいかを語っていましたが、実際は三下に過ぎませんでした・・・。
悪役の二人があほ過ぎるこもあって、全体的にいまひとつ緊張感がない展開でした。メインはヒーローの苦悩なんでしょうね。そちらはこれでもかってくらい濃かったですw
ヒロインが最後兄たちに同情めいた態度でしたけど、うーん。この作者ってどうして最後にヒロインにいい子ちゃんぶりっ子させるんだろう。そんな菩薩の如きヒロインは特に求めていないのですが。
個人的にはヒーローより、その友人アーカーシャのほうが気になりました。彼の話とか・・・ないですよね。
前二作より、ハードルが低めなので今まで設定に引いていた方にもお勧めできる作品でした。

アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪なう

  アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪なう  ゲイル・ギャリガー  ハヤカワ文庫


『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』に続く英国パラソル奇譚の第2弾。今回もヒロインとパラソルが大いに活躍しています。


ヒロイン:アレクシア・マコン 伯爵夫人 反異界族 陰の議会議長
ヒーロー:コナル・マコン 伯爵 人狼団のアルファ BUR捜査官

結婚して3ヶ月足らずのマコン夫妻は、反発し合うばかりだった独身時代に比べて大いにうまくいっていた。ある朝倫敦からの知らせにより、ヒーローは倫敦へと駆け出した。その後陰の議会の議長として議会に出席したヒロインはそこでヒーローが慌てて出ていった理由を知る。ロンドン周辺でゴーストが消え、吸血鬼や人狼たちがその力を失っていたのだ。原因を確かめるべく、ヒーローは一足先にスコットランドに向かった。そこにはかつて彼がアルファだった人狼団があった。一方理由も説明されずに置いていかれたヒロインも、新たに知り合った帽子屋のマダム・ルフォーらとともに、飛行船に乗ってスコットランドに向かうことになった。


主人公カップルがいいんですよねぇ。あんなに反発し合っていたのも、互いへの欲求不満だったのでしょう。そちらの解消が可能となりすっかりラヴラブカップルですよ。誰がどう見たって甘い新婚さんなのに、なぜか作中では二人の恋愛結婚が疑われてるんですよ。不思議だわ〜。
今回は二人一緒にいる時間はそれほど多くないんですけど、それでも仲がいいのがわかります。ヒロインの些細な褒め言葉にいちいち敏感に反応するヒーローが可愛い。もし狼の姿だったら絶対尻尾をばたばた振ってますw小柄な女性はみすぼらしい犬に見えるというヒーローにとって、ヒロインは立派な雌狼に見えるのでしょう。
寿命の問題はやっぱりあるのですね。二人とも気にならないのか??今はいいけど、ヒロインだけどんどん歳を取り、最終的にはヒーローが遺されることになっちゃうなんて、二人とも耐えられるの?
今回新たな主要人物として、謎のフランス人マダム・ルフォーが登場。どうやら今後のお話でも活躍するようです。クールな見かけとは違って、けっこう情熱家ですね。ヒーローにとってはアケルダマ卿以上のライヴァルになりそうw
ヒロイン妹・フェリシティは必要でしたかね?アイヴィは賑やかし担当でしょうけど、彼女だけで十分ですよね。
なぜヒロイン父はヒロイン母とわざわざ結婚したんですかね。社会のルールに縛られるタイプじゃなさそうですから、何かしら目的があったと思います。ヒロイン母に惚れた可能性はほぼ無いしwこのヒロイン父が3作目の鍵となるようです。ヒロイン父はヒロイン同様反異界族だったんですが、かなり名が知れてるようですよね。まあ異界族より反異界族のほうがずっと数が少ないみたいですからね。
今回もマイペースなアケルダマ卿。彼のような情報収集が生きがいの人にとっては、エーテルグラフはお気に入りのおもちゃですね。ヒロインのこと、初対面の時からファーストネームで呼んでたっていうけど、いつも違う愛称で呼んでましたよね?名前で呼んだのは今回初めて見た。
ライオールの苦労と悩みの種は尽きないようですね、たぶん次回作ではもっとひどいことになってると思うし。
ああ、それにしても最後の最後に来て、あの終わり方は何!?引きすぎにもほどがあるっつーの。幸いもう3作目は出版されているので早く読みたいです。くらっしくな冒険譚と、ロマンスが程よく融合したかなりお勧めのシリーズですので、未読の方はぜひ。

エンジェルズ・スカイ  シャロン・サラ

  エンジェルズ・スカイ  シャロン・サラ  MIRA


エターナル・スカイ』に続く竜巻シリーズ第2弾。今回は竜巻の時に行方不明になった子供の両親が主人公。それほど数は多くないですけど、シャロン作品にはたまに夫婦物があり、どれも佳作揃いです。


ヒロイン:ケイティ・アール
ヒーロー:J・R・アール 石油会社勤務

ルイジアナ州ボルドレーズで暮らす結婚して十年以上過ぎたアール夫妻だが、いまも互いを深く愛し合い、一人息子のボビーを大切に育てていた。夫婦の唯一の問題は夫・ヒーローの仕事上出張が多く家にいないことだ。今回、昇進を気にニューオーリンズで落ち着いた暮らしが出来るようになった。しかしニューオーリンズを襲ったハリケーンで両親を亡くした妻・ヒロインはこれを受け入れられず、結局ヒーローは単身赴任となってしまった。ボビーは週末のみヒーローの下にいくことになった。ある日曜日、本当ならボビーはヒーローの下へ行くはずだったが仕事で都合がつかなかったため、ヒロインとともに教会へ行った。そこで母子は竜巻に遭遇する。教会の中へ逃げたはずのボビーは姿を消し、ヒロインは半狂乱となって息子の行方を捜した。一方ヒーローは海上の石油採掘基地に取り残され、ヒロインたちからの連絡を知らぬままでいた。


シャロンて、こんなこと言ってはなんですが、主人公たちより犯人の心情描写のほうがうまいと思います。主人公たちの心情描写はロマンス風味なんですけど、それ以外の脇役、犯人などの描写は時々普通のミステリ以上に鋭く説得力があり、読んでいてどきどきします。今までの傾向からして、純粋なミステリに転向することはないでしょうけど。そもそもミステリ部分はオマケっぽいし。
シャロンの最近のカップルは基本的にお互いを思い遣って穏やかに結ばれるので、二人が結ばれるどきどき感は少ない作品が多いです。今回のように最初から既に成立してるカップルが困難を乗り越えていく話のほうがむしろ作風にあってるのかも。
愛し合いながらも、すれ違う夫婦。そこに襲い掛かる想像もしなかった惨事。がテンポよく語られます。ヒロインの気持ちもわかるし、ヒーローの気持ちもわかるのよ〜。
でも家を勝手に買っちゃうのはいかがなものよ。そんなことするのハーレクインRの大富豪ヒーローだけだと思ってたよ。ヒーローはそれなりに稼いでいるかもしれないけど一介の勤め人、家を何件も買えるほどではないでしょ?日本だったら即離婚問題ですよ、こんな大人買い。
そういえば、専業主婦のヒロインて久々に見たなー。ヒストリカルのヒロインですら仕事を持ちたがる昨今、今回のヒロインのような家庭に収まる良妻賢母タイプは本当に希少ですね。
シャロンのヒーローですから、絶対ヒロインを責めたりしないですけど、でももし息子が見つからなかったら、本当にヒロインを責めずにいられるかな?そもそも息子が消えたままだったら夫婦はその後やっていけたのかな、とか現実的な問題がちらりと頭をよぎりました。
ボビーは酷い状況に置かれていますが、そんなに心配してませんでした。確かシャロンの亡くなった婚約者の名前ってボビーじゃなかったですか?そんな思い入れがある名前使ってるなんて、きっとボビーは無事だわ、と筋に関係なく思ってましたw厳密には無事じゃないですけどね。愛溢れる両親がいるから心の傷もやがて癒えるでしょう。そう願います。
下劣な犯人についてかなり細かく描写されており、嫌が応にも緊張感が高まります。最後の派手なかーチェイスシーンより、むしろ誰もボビーが誘拐されていることに気付いていない状況のほうが怖かったですね。
あとがきにもありましたが、こういう理不尽な事件て本当にたくさんあるんでしょうね。現実を考えるとなんだか暗い気持ちになりますね。何もアメリカに限ったことじゃないし。
せめて物語の中では愛し合う素敵な家族がハッピーエンドを迎えられて良かったと思う1冊でした。
3作目に関してはコメントなしでした。捜査官は行方不明のままだし、出ないって事はないでしょうから、楽しみに待つことにします。

ウィンダム公爵とつれない婚約者  ジュリア・クイン

  ウィンダム公爵とつれない婚約者  ジュリア・クイン  RHブックス


ウィンダム公爵と美しき義賊』の続編です。スピンオフではなく、前後編と考えたほうがいいでしょうね。両方順番通りに読むのが一番です。もちろん予想通り、トーマスとアメリアがカップル。でももう前作読んだのがずいぶん前で、細かい内容忘れちゃった・・・。


ヒロイン:アメリア・ウィロビー 21歳 クロウランド伯爵令嬢
ヒーロー:トーマス・キャベンディッシュ 第7代ウィンダム公爵

ヒロインは生まれた時からの婚約者であるヒーローとの結婚をずっと母親からせかされてきたが、ヒーローのほうは結婚はおろかヒロインに興味すらないようで、二人は時折礼儀正しい会話をするのみだった。あるとき、ヒーローが地元の舞踏会で気まぐれのようにダンスを申し込んできたが、ヒロインはあっさり断った。若くして公爵位を継いで以来、常に周囲から気を配られることが当たり前だったヒーローにとってそれは予想外の出来事だった。その時以来ヒーローは気の進まない婚約者だったヒロインに惹かれ始めた。一方ヒロインも彼が急にこちらに関心を寄せてきたことに戸惑う。


ある意味とっても貴族っぽい主人公でした。ヒーローは公爵としての義務と責任を一身に背負い、そのことに重圧を感じながらもやりがいを持ってやってきて、一方ヒロインも公爵夫人となるべく完璧なレディとして育てられてきました。世間的にはこれ以上にない望ましい縁組にも拘らず、二人はなかなか結婚しない。
タイトルのつれない婚約者ってどっちのことなんですかね。長年つれなかったのはヒーローのほう。前作も『ウィンダム公爵と美しき義賊』って言うタイトルで二人の男性を指しているようで、実はヒーローのことだけを指しているともいえるので、今回も両方ともヒーローのことを指したタイトルなのかも。
ヒーローの過去には同情するし、あのくそ婆(失礼!)に長年耐えてきたこともすごいと思うけど、ヒロインに対してはまったく誠実じゃなかったですね。婚約してれば(してなくてもだけど)ヒロインはおのずと行動を制限されているのに、自分は愛人作ってよろしくやってるんだもん。
ヒーローにしてみれば大嫌いな父親から押し付けられた不愉快な婚約かも知れんけど、ヒロインに責任のあることではないわけだし、もしどうしても気が乗らないのなら、断ることだって不可能じゃないでしょ。婚約したまま放置って、女性にとってまるでメリットない状況でしょ。結婚してるわけじゃないから既婚女性のような自由はなく、さりとて未婚女性として相手探しをできるわけでもない。常に未来の公爵夫人としての行動規範を求められる。ヒロインは社交界に正式なデビューをした感じもなさそうだし、とにかく中途半端な状態に置かれてます。ヒロインが怒らなかったのはレディ教育の賜物ですかね。
ヒロインは本当にお育ちの良いレディという感じでしたね。他のヒロインだったら絶対もっとヒーローに怒りをぶつけていると思う。散々自分を無視したくせに、ちょっと興味を持ったらとキスしてお触り、ヒーローはかなりずうずうしい。でもヒロインはずっとヒーローに気に入られるべく育てられたせいかわりとあっさりそういうヒーローを受け入れちゃいます。そういうところが少々物足りなくもないけど、そういう態度こそヒロインの育ちの良さかなとも思います。地図が好きだからといってもっと勉強して研究者になりたいとか、アムステルダムに行って自由を謳歌したいとかそういうススンだ感じじゃないんですよね。あくまで貴族令嬢としての弁えがある。最近のヒロインはあまり貴族の令嬢っぽくないタイプが多いので、ヒロインの奥ゆかしさは新鮮でした。
ヒーローは貴族としての責任と傲慢さを十分に持ってましたね。そういういかにも貴族的な彼が、その身分を失うという皮肉がこの物語の肝です。彼のその高潔さや責任感は爵位ゆえではないということを証明することによって、自分が何者かを認識する。だから最後の付け足し入らなかったですね。まったく本当にアメリカ人の称号好きには辟易します。ていうか、ジョージ4世にそんなことを簡単に決められる権限があるのかな。イギリスでは何事も議会の承認無くしては成立しなさそうですが。
公爵未亡人は相変わらずの傍若無人でしたね。徹頭徹尾憎まれ役でした。もちろん今回も改心などしません。
ヒロイン父は前作ではかなり感じが悪かった気がしますが、娘からみるとわりといい父親に見えるんですね。彼にしても、青天の霹靂で動転していたということがわかります。ただ娘の意見を聞くという姿勢が全然なかったですね。この時代の父親なんてそんなものでしょうけど。そのわりに最後はやけに物分りが良くて不思議。
せっかく真面目で貴族的な二人なんだから、できれば草むらでそういうことには至らずに結婚してほしかったですね。ヒーローの性格上しちゃったらもう結婚が確定事項になっちゃいますからね。プロポーズはその前が良かった。現代と違って、セックスしなれば愛を語れない時代じゃないのだから、たまにそういうことを尊重する作品があってもいいのに。
二人の関係のもどかしさを演出するためってわけでもないでしょうが、翻訳のせいか元々の地文のせいか、なんとなく回りくどい言い回しや文章が多い気がしました。あと、令嬢がげらげら笑うって、なんかヘンじゃない?せめてけらけら、ころころ、とかじゃダメ?